「あなたのパンを水の上に投げよ。ずっと後の日になって、あなたはそれを見出す。(伝道者の書11:1)
11章に入って伝道者の書としては異例の展開になります。前向きな提案をしています。パンを水の上に投げよう。あなたの受けた分を数人に分けよう。未来に投資すれば、いつかその報いが戻ってくる。災いは避けられないので、いざという時のために保険をかけておけば災難が起きた時に助けになる。
あなたのパンとは何でしょう。
何かの資格を取ったり、習い事をしたり、経験を積んだり、海外旅行することかもしれません。それらはきっと未来に役に立ちます。あなたの仕事に役立つことや、教会の奉仕で生かせることを身に付けましょう。運転免許を取るためにはお金と時間がかかりますが、一生を考えると価値のあることです。
「朝にあなたの種を蒔け。夕方にも手を休めてはいけない。あなたは、あれかこれかどちらが成功するのか、あるいは両方とも同じようにうまくいくのかを知らないのだから。」(6節)
4節にあるように、天気を心配しすぎる人は種を蒔くタイミングを失ってしまいます。完全な天気など存在しないのです。朝早すぎるかなと思えても種を蒔いてみましょう。夕方で遅すぎるかなと思っても蒔いてみましょう。若すぎることもないし、年を取り過ぎることもありません。あれかこれか、あるいは両方がうまくいくこともあります。人生の最後に悔やむことは、やったことではなく、やらなかった事です。
宗教改革者ルターの言葉として流布しているフレーズを紹介します。明日が世の終わりだとしても、私は今日リンゴの木を植える。
あなたの種とは何でしょう。
種というと福音の種が最初に心に浮かびます。後悔先に立たず。嫌われても伝えておきたいという人がいるなら、福音を伝えましょう。相手の心の天気を気にしていては時を逃します。
「若い男よ、若いうちに楽しめ。若い日にあなたの心を喜ばせよ。あなたは、自分の思う道を、また自分の目の見るとおりに歩め。」(9節)
朝日が昇る時、光自体が喜びと希望を与えてくれます。若さというものは確かに一時的で空しさを含みますが、希望に満ちた時期です。だから、若者を応援してあげましょう。若い時はエネルギーがありますが、折れやすく、失望しがちです。だから、「自分の思う道を歩め」と励ましてあげましょう。若い時ほど柔軟性と吸収力のある時期はありません。
不平等な社会、やがては死ぬ人間、曲がったものは戻せない生涯、愛する時もあり別れる時もある。それが分かると、多くの人は利己的になり、他人を踏みつけて欲望を追求し、刹那的になります。伝道者の提案はそれとはまったく違い、希望をもって進めというのです。
矛盾に満ちた社会とはかない命を知った上でもこんなに前向きになれるのは何故でしょう。それでも神がおられるという重大で根本的な前提があるからです。人間の分析や予測を超えた神のみわざがあるから種を蒔けるのです。
「あなたは、一切を行われる神のみわざを知らない。」(5節)
私たちは神のみわざを知りません。神の介入や奇跡も予想できないのです。だから前向きになれるのです。どんな時も未来に向けて種を蒔きましょう。若い人は思い切って自分の道を突き進みましょう。
種を蒔くときの、不安な心も、祈りも、勇気も、決断も、実行も、そのすべてが神の目には尊いのです。
□パンを投げよう、種を蒔こう
□自分の思う道を悔いなく歩もう