伝道者の書の最終回です。
すべては空しい。それが基調トーンとなって始まりました。時代が変わっても何も変わらない。仕事で成功しても、お金を得ても、快楽を追求しても空しい。人は生まれ、人は死んで行く。曲がったものは元に戻せない。世の中は不平等で、不条理。このようにして著者は世界と人生を冷徹に見つめました。
伝道者の書は、人生や社会を客観視しているのですが、時折、読者を指さしてきます。あなたの心を見つめよと突然迫ってきます。12章もそうです。
あなたの人生だから、あなたの若い日にあなたの心を方向付けよと言うのです。神はどこか遠くの存在ではなく、神とはあなたと密接な関係がある。あなたを創造した方が神なのだと。大切なのは、あなたの心、あなたの態度です。あなたの創造者を覚えよ、と迫ってきます。
あなたの若い日に、あなたの創造者を覚えよ。わざわいの日が来ないうちに、また「何の喜びもない」と言う年月が近づく前に。(伝道者の書12:1)
3~7節では老化の現実が描かれています。一行の内容を一枚の絵のように描いています。目が見えなくなる、耳が聞こえなくなる、運動能力が衰える、背が曲がる、白髪になる、熟睡ができなくなる、葬儀が増える。
こうしてついに銀のひもは切れ、金の器は打ち砕かれ、水がめは泉の傍らで砕かれて、滑車が井戸のそばで壊される。土のちりは元あったように地に帰り、霊はこれを与えた神に帰る。(6~7節)
今はもう動かないおじいさんの時計という歌を思い出します。6節では、毎日使って来た井戸の道具が突然壊れる様子を書いて、昨日まで元気だった人の死を語っています。
若い時は今日も明日も楽しみがあります。でも歳を取ると老化のために今までのようには生活できず、「何の喜びもない」と嘆くようになります。雨の後に青空が来るのでなく、再び雨雲が来るような生活が待っています。だから若い時に神を心に覚えよというのです。
創造者を覚える事とは何か。
神の存在を受け入れ、神を信じることです。私は神に造られたと認めることです。そうすると、感謝と謙虚さが生まれます。神が手塩にかけて造り、育てて下さったと分かると、神の愛を感じることができます。だから、神への愛と尊敬と賛美の心が生まれます。神の心に耳を傾け、神の心を理解するなら、神に似た者とされていきます。神の国建設のために用いられます。
あなたが子供時代、十代や二十代で救われた人であったなら幸いな事です。長い人生を神と共に歩めるからです。若い時の純粋さは信仰を持ち、信仰を深めるためにとても助けになります。あなたも、あなたの周囲の若者に神を伝えて下さい。
13節は、まとめの言葉であり、結論です。
結局のところ、もうすべてが聞かされていることだ。神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。(13節)
神を恐れて生きることは、創造者を心に覚えることと同じです。
「神のなさることは、すべて時にかなって美しい」(3:11)、「ただ、神を恐れよ」(5:7)、「神のみわざに目を留めよ」(7:13)、伝道者の書は一貫して神を恐れよと語ってきました。
□創造者をあなたの心に覚えよ。
□あなたの若い日、今日、神を信頼しよう。
□神を恐れて生きることが、不条理な社会を生きる秘訣になる