2024年5月26日日曜日

ヨハネ3:16~21 神は実に 

 マルチン・ルターはヨハネ3章16節を「小さな聖書」と呼び、聖書の内容が凝縮された重要聖句だと述べています。今日はこの一節を中心に見ていきましょう。 

 神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。(ヨハネ3:16)

 ヨハネの福音書の特徴は主イエスのエピソードを厳選して掘り下げている点にあります。また、その時の様子や会話を詳細に記録した後、ヨハネ独自の視点で解説を加えていることも大きな特徴です。

ニコデモと主イエスの会話(3:1~15)は不自然なほど急に終わっています。それは、青銅の蛇が荒野で竿の先に上げられたように人の子も上げられると主イエスが言われた事に(3:14)説明を加える必要があったからです。読者に正確に分かってもらうため、16節で肯定面から解説し、17~21節では否定面からも説明しました。

3章16節を一番シンプルに分解するとこうなります。
  1、神はあなたを愛している
  2、一人子を与えるほど愛している
  3、それは信じる者が滅びずに永遠の命を持つため

 ヨハネの福音書において「愛」についての言及は39回もあり、他の福音書の何倍にもなります。そしてヨハネ3:16節はヨハネの福音書で初めて愛が語られる場面です。

 神はこの世を愛されました。世とは、すべての人を指します。あなたも私も神に愛されています。神が私たちを愛されたという証拠は、神が一人子のイエスさまをこの地上に遣わし、十字架で私たちの罪の解決をされたことによって分かります。愛は払われた犠牲の大きさによって分かるのです。

 神が私たちを愛されたのは、私たちが罪ゆえに裁かれ滅ぼされないためであり、永遠の命を与えるためでした。

17~21節は、16節で語られた同じ内容を、反対側から見て説明したものです。暗闇の中で生きる者は光が近づくとまぶしいので逃げてしまいます。この場合、暗闇とは罪の生活です。光とは正義や真理を表していますが、主イエスご自身をも指します。19節で言っているように、光より闇を愛する生活は、それ自体がもう裁きになっています。

ヨハネ3:16節のポイントは、神があなたを愛しているという点にあります。このポイントをしばらく考え、あなた自身の心で味わって下さい。しっかり納得できないと、神の愛はあなたの心で根を張らず、芽を出すこともありません。

あなたが罪深くても、卑怯者でも、自己中心でも、神は愛しておられます。自分が嫌いなあなたも神は愛しています。

それでも分からないなら、十字架につけられた主イエスを見上げて下さい。あそこに、神があなたを愛しているという印があるのです。主イエスが歴史的な人物である事と、十字架にかけられた事は否定できない事実です。

言ってみればヨハネは、映画の場面を一旦止めて、解説者となって画面に表れ、神はあなたを愛していますと語り掛けているのです。おそらく、ヨハネは目に涙を浮かべ、全身全霊を込めて訴えています。
 神の愛を受け止めて下さい。あなたは愛されるため生まれたのです。

□神はあなたを愛しています
□十字架は神の愛の証拠
□あなたは裁かれず滅びません
□あなたも誰かを愛する人になる

2024年5月19日日曜日

ヨハネ3:1~15 ニコデモ

さて、パリサイ人の一人で、ニコデモという名の人がいた。ユダヤ人の議員であった。(ヨハネ3:1)

ニコデモは純粋な求道者でした。彼は年配(4節)のパリサイ人で議員でした(1節)。夜ひそかに主イエスを訪ねて長年求めて来た魂の課題を打ち明けました。

主イエスの宮きよめにより、神殿の庭に静寂が戻った事に驚き喜び、主イエスが神から遣わされた教師だと確信しました。また、その後に主イエスが行った奇跡の数々を目撃し、神が共におられる特別な方だと分かり、2節でその事を伝えました。これは信仰告白に近い内容です。ニコデモ自身も主イエスのように神を深く知り、神のみこころを行って人々に貢献したいと願ったようです。

イエスは答えられた。「まことに、まことに、あなたに言います。人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできません。」(ヨハネ3:3)

ニコデモが求めている事は<神の国に生きる人の姿>だと主イエスは解説されました。そのためには、新しく生まれることが必要だと言われました。

 あなたは新しくなりたいと思いますか。もう一度、高校生に戻れたら何をしますか。結婚をやり直したいですか。仕事を変えたいですか。

 

肉によって生まれた者は肉です。御霊によって生まれた者は霊です。(3:6)

 母の胎に戻って生まれるのは難しい事だとニコデモは真剣に考えました。(4節)そんなニコデモを見て主イエスは言葉を変えて説明されました。肉とは、人間的努力を表す言葉です。新しく生まれるために、もっと勉強し、もっと苦行に耐えても無駄で、聖霊に身を委ねることが必要なのです。

風は思いのままに吹きます。その音を聞いても、それがどこから来てどこへ行くのか分かりません。御霊によって生まれた者もみな、それと同じです。(3:8)

 風は目に見えません。でも、木の葉が揺れれば風が吹いていると分かります。聖霊の働きも同じです。聖霊が心の底から新しくして下さるとその人の生活態度や雰囲気や人柄までもが変えられていきます。聖霊は救われた人の心を変え続け、きよめ続けて下さいます。

 こうした説明を聞いてもニコデモは良く分かりません。そこで主イエスは律法学者ならすぐに理解できる旧約聖書の民数記21:8~9を例にして説明されました。

モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子も上げられなければなりません。それは、信じる者がみな、人の子にあって永遠のいのちを持つためです。」(3:14~15)

新しく生まれるきっかけは、信じることです。モーセが作った青銅の蛇を見上げるならイスラエルの民は救われました。同じように、ニコデモも竿の先に上げられた主イエスを信じれば救われ、永遠の命を受けるのです。

 ヨハネ19:39を見ると分かりますが、主イエスの死なれた後、ニコデモは主イエスの埋葬を手伝っています。主イエスの十字架を見た時に主イエスの言葉を思い出し、<私の罪を赦すための子羊として死んで下さった>と分かり、主イエスを救い主と信じたと思われます。

□人は新しく生まれることができる
□聖霊に身をゆだねよう
□主イエスを仰ぎ見て信じよう

2024年5月12日日曜日

ヨハネ2:13~25 神殿にて 

さて、ユダヤ人の過越の祭りが近づき、イエスはエルサレムに上られた。そして、宮の中で、牛や羊や鳩を売っている者たちと、座って両替をしている者たちを見て、細縄でむちを作って、羊も牛もみな宮から追い出し、両替人の金を散らして、その台を倒し、鳩を売っている者たちに言われた。「それをここから持って行け。わたしの父の家を商売の家にしてはならない。」(ヨハネ2:13~16)

なぜ主イエスは「宮きよめ」をされたのでしょう。
 その後に復活の話をされたのはなぜでしょう。

 主イエスは、神殿のことを「わたしの父の家」と呼びました。ヨハネの福音書の中には「父」という言葉が110回ほどあり新約聖書の三分の一を占めます。「わたしの父」という表現も福音書の中で一番多く21回も出てきます。
 ヨハネの福音書では、主イエスと父なる神の関係が親密であることが繰り返し述べられています。主イエスは、目に見えない父なる神を解き明かす方であり(ヨハネ1:18)、父のお心を一番知っていたお方でした。だから宮きよめという行動をされたのです。

エルサレム神殿の門をくぐると静寂な祈りの場になるはずでした。でも、動物を売る者やローマ硬貨をユダヤの硬貨にする両替商などが広い庭で商売をしており、客を奪い合う喧噪で満ちていました。主イエスは、動物たちを追い立て、机を倒し、商売人たちを門から追い出しました。

主イエスの行動が過激だったので、商売人に殴られ、当局に逮捕される可能性がありました。逮捕されなかったのは主イエスの主張と行動が旧約聖書に照らして正当なものだったからです。「わたしの家はあらゆる民の祈りの家と呼ばれる」(イザヤ56:7)とある通りです。神殿を本来の姿に戻すために主イエスは宮きよめをされたのです。

「わたしの父の家を商売の家にしてはならない」(ヨハネ2:16)という言葉に注目して下さい。ヨハネの福音書では共観福音書に書かれている「祈りの家」という説明がありません。焦点は、罪の赦しの商売化です。罪の赦しという魂に関わる行為を商売にしてはいけない。父なる神の悲しみや憤りを主イエスが汲み取って宮きよめをされたのでしょう。
 本来、自分の犯した罪を悲しみながら神殿まで旅をし、かけがいのない自分の家畜の中から傷のない動物をささげる痛みを経験してこそ真の礼拝、真の悔い改めになるのです。手ぶらでエルサレムまで旅行し、神殿の庭でお金を払ってさっと動物を祭司に渡すようでは、罪の赦しのいけにえ代行業を利用したに過ぎないのです。


イエスは彼らに答えられた。「この神殿を壊してみなさい。わたしは、三日でそれをよみがえらせる。」(ヨハネ2:19)

ヨハネの福音書には、明瞭であっても意味を解読できない主イエスの宣言が何度も出てきます。この言葉もその一つです。
 宮きよめの場にいたユダヤ人達は、何の権威で宮きよめをしたのかと主イエスに抗議しましたが、主イエスは「三日でそれをよみがえらせる」と謎に満ちた答えをされました。人々には理解不能です。十二弟子でさえ、主イエスのすべての活動を見て十字架と復活を経験した後に、やっと意味が分かったのです。

ヘロデ王の指示で作られた巨大な神殿のことではなく、主イエスはご自分のよみがえりを語られたのです。よみがえりの前提は、死ぬということです。主イエスは、人々の罪を赦すために死ぬつもりだとここで暗に語られたのです。(まだ伝道の初期ですから、注意深く十字架の死については秘密にされています)十字架と復活により罪の赦しは完結します。動物のいけにえが無用になることも暗示されています。

それゆえに、主イエスこそが「世の罪を取り除く神の子羊」(1:29)だと分かるのです。

□父の心を解き明かす主イエス
□罪の赦しのために砕かれた心が大切
□私の礼拝にも宮きよめが必要

2024年5月5日日曜日

ヨハネ2:1~12 カナの婚礼

 ガリラヤのカナという小さな町で結婚式が開かれましたが、ぶどう酒が無くなりました。そんな時、主イエスは大きな水がめに水を入れるよう指示され、それが高級ぶどう酒に変わりました。これが主イエスこそが真の救い主である証拠、「しるし」となったのです。

「イエスはこれを最初のしるしとしてガリラヤのカナで行い、ご自分の栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。」(ヨハネ2:11)

 主イエスの母マリアはこの結婚式に深い関わりがあったようです。

 主イエスは意図的にマリアを「お母さん」と呼ばず、「女の方」としました。これは、血縁関係を脱して、一人の罪人と救い主との関係であることを知らせるためだったのでしょう。マリアはそれに気づいて、使用人に指図する時に「うちの息子」と言わず、「あの方が言われることは何でもしてください」(4節)と述べました。

 結婚式会場には石を削った水がめが置いてありました。80リットルも入る大きな器で、手をきよめるために使う水を入れていました。「6」は「7」に及ばない不完全数で、旧約聖書の律法が不十分であることを暗示させるものです。水をぶどう酒に変えることにより旧約律法が終わり、救い主による新しい時代が来たことを教えています。

旧約聖書においては救い主の到来に伴う印として豊かなぶどう酒のイメージが語られています。「山々は甘いぶどう酒をしたららせ、すべての丘は溶けて流れる」(アモス9:13)ほかにも、エレミヤ31:12、ホセア14:7など。

「宴会の世話役は、すでにぶどう酒になっていたその水を味見した。汲んだ給仕の者たちはそれがどこから来たのかを知っていたが、世話役は知らなかった。」(9節)

主イエスはそっと奇跡をされました。この奇跡は、花婿と花嫁も、結婚式の世話役も、ゲスト全員も知りませんでした。ご自分が脚光を浴びることを避け、結婚式の主役はあくまでも新郎新婦であることを大切にされました。主イエスは謙虚な救い主です。

 

今回の奇跡を振り返りましょう。2つの大切な事に気づきます。

まず、神が愛だと分かります。新郎新婦やその両親は貧しかったと思われます。余るほどのぶどう酒を用意できなかった家族でした。ぶどう酒が無くなる緊急事態になった時も、財力で対処することができません。神は、そんな新郎新婦をあわれみ、高級ワインを溢れるほどお与えになりました。神は愛です。主イエスは、神がどんな方かをこの奇跡によって見せて下さいました。

第二に、神は偉大な力をお持ちです。「すべてのものは、この方によって造られた」(1:3)とあるように、主イエスは神としての力をここで発揮されました。無から有を造る神が、水をぶどう酒に変えたのです。この奇跡は、主イエスがまことの救い主であり、まことの神であることを証明した、しるしなのです。

この奇跡は主イエスがまことの神であり、旧約聖書が預言した救い主であることを証明するものです。それだけでなく、「ひとり子の神が、神を解き明かされた」(1:18)とあるように、父なる神がどのような方を主イエスは奇跡を通して人々に解説されているのです。このようにして「ことば」としての役割を果たしておられます。

7つの奇跡の第一は水をぶどう酒に変える奇跡でした。古い律法や儀式は過去のものになりました。救い主が到来されたので、喜びと祝福に満ちた新しい季節が始まったのです。まことの花婿が来られたのです。

 「水がめを水でいっぱいにしなさい」(7節)

 主よ、あなたの愛にもっと気づかせて下さい。主よ、あなたの謙虚さに近づけますように。主よ、私の目の前にある水をぶどう酒に変えて下さい。

□神は愛です
□水をぶどう酒に変える偉大な力
□私たちの生活に喜びをもたらして下さる主イエス

ヨハネ20:1~18 ラボニ

 「だれかが墓から主を取って行きました。どこに主を置いたのか、私たちには分かりません。」(ヨハネ20:2)   マグダラとはガリラヤ湖西岸の町の名で、ティベリアの北にあります。マグダラのマリアは、ルカ8:2によると7つの悪霊を追い出して病気を癒してもらった人で、マタイ27...